メル・ボニス（1858-1938）：
1-4. フルート・ソナタ
5-8. ヴァイオリン・ソナタ
9-11. チェロ・ソナタ
ロラン・マルタン（ピアノ）、クララ・ノヴァコヴァー（フルート）
カイ・グルーステーン（ヴァイオリン）、ジャン=マリー・トロトゥロー（チェロ）
録音：1998年
VOICE OF LYRICS【フランス輸入盤】
メル（メラニー）・ボニス(1858-1938)は、パリの慎ましい家庭に生まれ、12歳までピアノを独学した後に音楽学校に入り、セザール・フランクに才能を認められパリ音楽院で学んだ女性作曲家。しかし、そこで出会った恋人との結婚を両親に反対され、音楽院退学を余儀なくされた彼女は、25歳も年長の実業家の後妻に迎えられました。子育てに専念していた彼女は、約１０年後にかつての恋人に再会し、彼の勧めにより作曲を再開するとともに、秘密の関係を続けました。その関係は後に破綻しましたが、作曲家としての彼女は、かなりの数の作品と名声を残しました。そのメル・ボニスは他の女性作曲家と同様に再評価の動きがが著しく、フルートの作品などは、最近頻繁に演奏されるようになってきました。しかし、彼女の室内楽のまとまった録音はたいへん珍しく、フランス音楽好きにはうれしいアルバムです。「フルート・ソナタ」は、淡い色彩のファンタジックな音楽で、触るだけで溶けてしまいそうな儚さが印象的です。「ヴァイオリン・ソナタ」はドビュッシーやフォーレのソナタと比較しても遜色のない優れた作品で、繊細で優美な旋律と色彩のパレットの豊富さが耳に心地よく、メル・ボニスの瑞々しい感性がストレートに表れています。「チェロ・ソナタ」は、優美さと同時にドラマチックな力強さも感じさせ、美しさの影に苦悩がチラチラ見えるような音楽です。
ピアノを演奏をしているのは作曲家でもあるロラン・マルタン。メル・ボニスやオンスローの復興運動を率先して進めている気骨のある人物です。超絶技巧のアルカンを弾きこなすほどの技巧派ピアニストでもあり、このアルバムでは最も表現意欲が旺盛で、アンサンブルを終始リードしているようです。クララ・ノヴァコヴァーはチェコ出身のフルート奏者で、パリ・アンサンブル・オーケストラの首席を務めています。カイ・グルーステーンはカナダ出身ですが、パリへ移ってからはイル・ド・フランス管弦楽団のコンサートマスターを務め、シャンドール・ヴェーグの招聘でプラハのモーツァルト協会へ赴き、室内楽の研鑽に努めました。ザルツブルグのカメラータ・アカデミカでしばしば演奏し、ソリストとしても活動中です。チェロのジャン=マリー・トロトゥローはフランス出身ですが、フィンランド文化省の招聘でフィンランドへ赴きアルト・ノラスに師事し、その後オーヴェルニュ管弦楽団のチェリストとして活動しました。現在はソリストとして、また自らシベリウス・トリオという弦楽三重奏団を創設してリサイタルを行っています。
