ハイオルフ・シュリヒティヒ(ヴィオラ、指揮)/ミュンヘン室内管弦楽団 録音:2000,2001年
TUDOR【スイス輸入盤】
ありそうであまりない古典派のヴィオラ協奏曲集で、シュターミツ(1745-1801)とホフマイスター(1754-1812)、カール・フリードリヒ・ツェルター(1758-1832)といっ同時期にドイツに生まれた3人の作曲家たちの個性の違いが楽しむことができます。
シュターミツはパリへ移住し、宮廷音楽家として活躍したせいか、優雅な旋律や明確な構成をもったいかにも古典らしい作品です。洗練されたしなやかなヴィオラのソロは、ヴァイオリンとの差を感じさせないほど明朗・快活なのが特徴です。一方、ホフマイスターはウィーンで作曲家としてだけでなく、楽譜の出版業者としても活躍した人物。ハイドンやモーツァルトに似た作風で、ドイツ的でヴィオラがより前面に出てきて技巧を披露する作品です。とりわけ2楽章のアダージョのしっとりした旋律が秀逸で、ホフマイスターの傑作の1つと思われます。
最後のC・F・ツェルターは一番耳慣れないかも知れませんが、実はメンデルスゾーンの師として音楽史では重要な存在となっている人。バッハの孫弟子としてベルリンで活躍したそうですが、この人のヴィオラ協奏曲が実に素晴らしい曲です。第3楽章がロンドになっており、なぜかチェンバロも乱入しレチタティーヴォ的になってしまったりして、吹っ切れたような明るさがたまらなく面白い。ヴィオラ・ソロを担当し、指揮もしているシュリヒティヒの技巧も抜群で、これはかなりの名演といえるでしょう。曲・演奏・録音ともに優れたアルバムなので、古典派好きには強くオススメできます。