1-3. ウィリアム・グラント・スティル(1895-1978)／あなたが行くなら、孤独の歌、支流の家
4-7. アドルフス・ヘイルストーク(1941-)／バスーン・セット
8. エド・ブランド(1926-)／バスーンとクラリネットのための「ワン・オン・ワン」
9. ユリシーズ・ケイ(1917-1995)／バスーン・ソナタ
10. エド・ブランド／バスーンのための
11. ゲイリー・パウエル・ナッシュ(1964-)／デフォーメーション?（バッハによる）
12. エド・ブランド／バスーンとヴァーチャル・パーカッションのための「ワン・オン・ワン」
13. スウェーデン民謡／ウティ・ヴォル・ハーゲ（私たちの牧場に）
14-16. ダニエル・バーナード・ルーメイン(1970-)／レコライオン・ループス(ウティ・ヴォル・ハーゲに基づく)
レコライオン・ワシントン（ファゴット）、カリーナ・ナイバーグ・ワシントン（クラリネット，声）、マーク・エンスレー（ピアノ） 発売：2008年
ALBANY【アメリカ輸入盤】
いわゆるクラシック音楽におけるアフリカ系アメリカ人の作曲家の存在はウィリアム・グラント・スティルが辛うじて知られているくらいで他はあまり知られていません。これはそうした知られざる作曲家たちの足跡を知る事が出来るだけでなく、それが全てファゴットのための作品集という珍しいアルバム。1895年生まれのスティルは、アメリカの主要なオーケストラを指揮した最初のアフリカ系アメリカ人指揮者でもあり、また、自作のオペラを上演された最初のアフリカ系アメリカ人でもあります。彼の音楽はアメリカの国民楽派にもたとえられ、交響曲第１番「アフロ＝アメリカン」をはじめ近年再評価が急速に高まっています。スティルの「あなたが行くなら」、「孤独の歌」、「支流の家」の３曲はもとは歌曲ですが、フルート奏者のアレクサ・スティルによってファゴット用にアレンジされたもの。心に染みる優しいメロディーは絶品です。
エド・ブランド(1926-)の「ワン・オン・ワン」は、バスーンとクラリネットのための作品とバスーンと打楽器のための作品の双方が収められており、両方とも軽妙で楽しい作品ですが、ヨーロッパ風とアフリカ風と対比を楽しんでいるかのようです。また、最も若い1970年生まれのルーメインは「レコライオン・ループス」は、原曲であるスウェーデン民謡「ウティ・ヴォル・ハーゲ」を紹介したのち、印象主義ともミニマルともいえる鮮やかな変奏を展開しています。
演奏しているレコライオン・ワシントンももちろんアフリカ系アメリカ人のファゴット奏者。アメリカの様々なオーケストラで活躍し、メンフィス木管五重奏団にも所属しています。技術的にも優れていますが、なにより音楽に共感し、心を込めて歌っているのが伝わってきます。アフリカ系アメリカ人の大統領が誕生したこの時代に相応しいアルバムです。
