ヴォルフガング・グリュクサム(チェンバロ) 録音:2000年
ORF(オーストリア放送協会)【オーストリア輸入盤】
ヴォルフガング・グリュクサムは、1958年オーストリアのニーダーエスターライヒ州メルク生まれの鍵盤楽器奏者。1974年にウィーン音楽学校でアルフレート・ミッテルホーファーにオルガンを師事し、1982年からはオランダのスウェーリンク音楽院でトン・コープマンからチェンバロを学びました。数々の国際コンクールで優秀な成績を収め、1985年からはウィーン音楽大学のチェンバロ科の講師を務めています。ソリストとして演奏活動を行うほか、チェンバロ奏者のパトリック・アイルトンやヴァイオリン奏者のエーリッヒ・ヘーバルト、ギター奏者者のピエール・ピツルといった様々な一流アーティストとパートナーを組み、国際的に活躍しています。特に長年バロック・ヴァイオリンとその奏法を研究し、ロンドン・バロックなどの様々な有名合奏団のリーダーを務めているヒロ・クロサキ(黒崎広嗣)とは定期的に共演し、優れたアルバムも発表しています。
この「ゴルトベルク変奏曲」のアルバムは、もっぱら共演ばかりで知られているグリュクサムの真価を伝えるソロ・アルバムであり、予想通り達者な音楽を聞かせてくれます。即興的な装飾音を巧みに取り入れた自由で即興的な雰囲気がとても愉しく、各変奏の個性をゆったりしたテンポでメリハリをつけて表現しています。全体の緊密な連携性よりも、個々の表情の違いを明確に描いており、冒頭の主題が最後に回帰するまでトータル約77分の演奏の中で、まるで音楽にストーリーがあるように刻々と表情が変化していく様は圧巻。明るい音色と陽気さは師のコープマンを思わせ、思索的な深さや構造美にはオルガニストとしての経験が活かされているようです。