ボリス・チャイコフスキー(1925-1996)：
1-4. 室内オーケストラのための４つの前奏曲
5-14. 組曲「ぶた飼いの王子さま」
15-24. 組曲「アンデルセンのおとぎ話」
25-43. 組曲「幸福の長靴」
キリル・エルショフ（指揮）／ムジカ・ヴィーヴァ室内管弦楽団
ルースカヤ音楽院チェンバー・クワイア・ソロイスツ(25-43)
録音：2009年4月24(1-4)、2月5日(5-24)、2月3日(25-43)
NAXOS【香港輸入盤】
チャイコフスキー(1925-1996)は、ショスタコーヴィチ、ミャスコフスキー、シェバリーンらに師事したロシアの作曲家。あの有名なピョートル・イリイチ・チャイコフスキーとの親戚関係はありません。ボリス・チャイコフスキーは名チェロ奏者ロストロポーヴィチやヴァイオリニストのピカイゼンと親しい交友関係があり、多くのチェロ作品やヴァイオリン作品を彼らに献呈しています。彼の作品は、高い名声のわりに不思議なほど録音される機会は少なく、これまでディスクは数えるほどしか出ていませんでした。しかし、近年になって相次いで新録音が登場したり、過去の録音の復刻も急速に進み、少しずつ再評価が進んでいます。
ボリス・チャイコフスキーは、交響曲や協奏曲、室内楽、歌曲など幅広いジャンルの音楽を手掛け、民族性の濃いやや古典的な雰囲気の音楽が多いものの、現代的な手法も縦横に用いた独自性の強い不思議な作風をもっています。また、ショスタコーヴィチやプロコフィエフといった同時代のソ連の作曲家と同様に、映画音楽なども数多く手掛けており、1954年から1958年の間にアンデルセンの話に基づいた５つのラジオ・ドラマ用付随音楽を作曲しました。しかし、このスコアはボリス・チャイコフスキーが急死した7年後に失われてしまい、それは2003年まで発見されることがありませんでした。ここではその中から３つの作品を取り上げ、もう一度組曲として蘇らせています。管弦楽作品ではかなり晦渋な作風を見せる人ですが、このおとぎ話のための音楽はとてもわかりやすいもので、とりわけ今回の演奏では歌の部分を全て削除して音楽のみを再現、この無垢な世界を再現することに成功しました。ポップでシニカルな音楽は、ショスタコーヴィチの映画音楽にも非常に似ており、現代曲にありがちな晦渋さは微塵もなく、コミカルで楽しいものです。大変珍しい曲の貴重な演奏です。
