フィリップ・フィーニー(1954-):バレエ音楽「ドラキュラ」
1.プロローグ
2.チャネリング・クロス駅
3.トランシルヴァニア
4.ドラキュラ城
5.ウィットビー、グランドホテルの冬庭園
6.サナトリウム
7.ニーナの部屋
8.地下室
9.死
ジョン・プライス=ジョーンズ(指揮)/ノーザン・バレエ劇場管弦楽団
オペラ・ノース合唱団、ポーリーン・サルボーン(ソプラノ)
録音:1996年8月、イギリス、エランド、オール・セイント・チャーチ
NAXOS【香港輸入盤】
「ドラキュラ」といえば、イギリス時代のアイルランド人作家ブラム・ストーカーの恐怖小説『ドラキュラ』に登場する男性吸血鬼(バンパイア)の名前。小説だけでなく映画や舞台でも格好の題材となり、吸血鬼といえば誰もが「ドラキュラ」を名を挙げるほど有名になりましたが、この1996年に作られたバレエ音楽「ドラキュラ」もなかなかの傑作。作曲者のフィリップ・フィーニーは、1954年イギリス生まれで、ケンブリッジ大学でロビン・ホロウェイやヒュー・ウッドから作曲を学び、さらにイタリアでドナトーニに師事した逸材。彼はこれまでにもバレエ「シンデレラ」など劇場のための音楽をいくつも書き上げていますが、この「ドラキュラ」はホラー的な描写が実に上手く、プラム・ストーカーの原作の雰囲気に相応しい音楽です。現代音楽だからといって晦渋さや聴きづらさは全くなく、アンドリュー・ロイド=ウエッバーのミュージカル音楽並みの親しみやすさがあります。心臓の鼓動音を表す音型が繰り返し使われ、要所要所で鐘や女声など効果的な音やユニークな管弦楽法が見受けられますが、ほんのりと漂うエキゾチシズム、香り高い夜の恐怖、危うげな幻想・・・など各場面を見事に表現しています。心臓の鼓動音と女声が妖しげにからむ「教会の地下聖堂」は全曲の中でも白眉でしょう。全曲で80分もかかる長丁場ですが、印象的なメロディが散りばめられたファンタジックで美しい音楽であり、時折ハッとするような独創的な響きも面白く、クラシック・ファンの鑑賞にも充分値します。聴いていて本当に怖くなる音楽としては最強といえるのでしないでしょうか。強力にオススメです。