イゴール・ストラヴィンスキー(1882-1971):
1.バレエ「ペトルーシュカ」組曲
ウラジーミル・フェドセーエフ/モスクワ放送交響楽団 録音:1991年
2~12.喜歌劇「マヴラ」
S・クリコワ、E・メリニコワ、N・ザゴリンスカヤ(Sp)、S・ヤコヴレフ(T)
シリル・チホノフ/モスクワ・ヘリコーン劇場室内管弦楽団 録音:1993年
OLYMPIA【ロシア輸入盤】
フェドセーエフとモスクワ放送響といえば、土俗的な迫力と野性味を全面に押し出した、いかにもロシアらしい「春の祭典」の名演で知られていますが、この「ペトルーシュカ」は、まさにその路線を受け継いだ強力な演奏。ドコドコと大音量で叩かれる打楽器やバランスを無視した金管の咆哮は、一時代前のロシアのオーケストラの味わいそのままでビックリさせられます。「ペトルーシュカ」の最もワイルドな演奏の1つといってもよいほど荒っぽく、現代的なスタイリッシュな演奏とはあまりもかけ離れています。加えて録音もイマイチですが(音がでかすぎて割れ気味)、それでもなおこの個性的かつユニークな演奏は聴き手をワクワクさせる魅力があります。
一方、喜歌劇「マヴラ」は、男女の痴話喧嘩を題材にした30分たらずのコミカルな寸劇。ストラヴィンスキーの作品の中ではあまり耳にする機会がありませんが、このシリル・チホノフ指揮モスクワ・ヘリコーン劇場室内管弦楽団の演奏は予想外に面白く、有名な指揮者が一流オーケストラを振った演奏に比べて、非常に猥雑で場末のいかがわしいムードがたっぷり。ヴァイルの「三文オペラ」にとても似ており、歌手たちもオペラ歌手のような歌唱ではなく、まるでキャバレー・ソングのように役になりきって歌っています。これまで「マヴラ」が面白い作品と思えなかった方はぜひお試し下さい。オススメです。