フー・ツォン(ピアノ) 発売:2003年
MERIDIAN【イギリス輸入盤】
ショパン弾きとして名声を博したフー・ツォンですが、フー・ツォンの録音は権利上の問題や録音には極めて慎重な演奏者自身のこだわりがあり、なかなか市販化されることがありませんでした。しかし、イギリスのメリディアン・レーベルからようやく発売されたアルバムはどれも珠玉の演奏ばかり。このスカルラッティの32曲のソナタも以前からたいへん評価の高いアルバムで、軽やかな音の粒立ちが心地よく、同時に明暗のコントラストも鮮やかに付けられたニュアンス豊かな演奏です。近年はチェンバロなど古楽器を用いた演奏が主流となっていますが、ピアノによる演奏はダイナミクスや音色の変化など表現の幅がより大きく、一見単純・明快なスカルラッティの音楽が、これほど豊かな表情や陰影を持っていることに改めて驚かされます。しかもその表現は決して感情的ではなく、常に気品のある落ち着きを保っており、しっとりした音色の多用によりフー・ツォンらしい詩的な情感が込められています。あたかもモーツァルトのようなスカルラッティ演奏とも言えるでしょう。