ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827):
1-4. 交響曲第8番 ヘ長調 Op.93
5-7. ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 Op.37
8. 大フーガ 変ロ長調 Op.133(ギーレン編)
ミヒャエル・ギーレン(指揮)/南西ドイツ放送交響楽団、シュテファン・リトヴィン(ピアノ)
録音:2000年(1-4),1994年(5-7),1993年(8)
HANSSLER【ドイツ輸入盤】
ミヒャエル・ギーレン(1927-)は、ドイツの指揮者で作曲家でもあり、現代音楽を得意としています。「冷血指揮者」などと呼ばれるほどドライでユニークな音楽作りで熱狂的ファンを得ていましたが、1986年に南西ドイツ放送交響楽団の首席指揮者となって以来、音楽の成熟度が増し、巨匠としての風格も出てきたといわれています。特に近年はマーラーやブルックナーなど交響曲を精妙で色彩豊かなアンサンブルで聴かせることで定評があります。
このベートーヴェン・アルバムでは、まず「交響曲第8番」が優れた演奏で、かつてのギスギスした厳しく冷たい感覚は殆どみられず、まさに円熟にしたがって音楽も深みを増し、表情も柔らかくなっていることを物語っています。それでいて細部までの見通しがよく、音のうねりやリズムの面白さをあぶり出した鮮烈な表現はさすが。凡庸な指揮者との力の違いを見せつけるパンチのある演奏です。「ピアノ協奏曲第3番」でもソリスト以上にギーレンの凄みある伴奏が印象に残るほどで、前奏部分のダイナミックで立体的な音の構築ぶりに引き込まれてしまいます。ソリストのリトヴィンは、メキシコ生まれで現代音楽に強いピアニストで、ここではやたらと粒立ちのよい音でドライに徹したユニークな演奏をしています。そして最後の「大フーガ」がこれまた壮絶!ギーレン編曲だけあって、バルトーク・ピチカートやコル・レーニョ、スル・ポンティチェロなどの特殊奏法をガンガンに織り交ぜたやりたい放題の過激な楽しい演奏です。「大フーガ」がお好きな方は必聴です。