ヴォイチェフ・キラール(1932-):
1.無伴奏合唱のための「悲歌」
2~5.9月の交響曲
アントニ・ヴィト(指揮)/ワルシャワ・フィル、同合唱団 録音:2003年9,10月
CD ACCORD【ポーランド輸入盤】
ヴォイチェフ・キラール(1932-)は、特に映画音楽の分野では知らない人がいないといってもいいほど有名なポーランドの作曲家。キラールの名は知らずとも、古くはコッポラ監督の映画「ドラキュラ」や「戦場のピアニスト」の音楽を作った人といえばお分かりの人も多いでしょう。このアルバムの「9月の交響曲」は最新の作品の1つで、アメリカの同時多発テロ「9.11事件」を題材にしています。また2003年9月11日に初演された際の記念碑的な録音でもあります。かきむしるような悲痛な叫びを感じさせる1楽章、暴力的なリズムが続く第2楽章、グレツキ風の祈りを込めた静謐なレクイエムである第3楽章、そして未来への希望を歌う感動的な終楽章と、ややお約束的な内容ですが、真摯で充実した音楽はキラールの代表的なシンフォニーとして今後も残り続けていくことでしょう。
無伴奏合唱のための「悲歌」も、悲愴感を感じさせる祈りの音楽で、悲痛な響きを保ったまま執拗なまでに繰り返す叫びが耳に突き刺さります。透明感のあるアカペラの響きがとても美しい作品です。
アントニ・ヴィトとワルシャワ・フィルの演奏もたいへん素晴らしく、2002年より音楽監督になったヴィトの力量の高さがうかがえます。アントニ・ヴィトは、作曲をペンデレツキに師事し、パリではナディア・ブーランジェとピエール・デルヴォーに学び、アメリカではスクロヴァチェフスキと小澤征爾にも師事した実力派。地方オケから始まり次第に一流オーケストラを振るようになって、成長著しい注目の指揮者として認められるようになりました。NAXOSレーベルにレコーディングした数々のアルバムも高く評価されています。