・チャイコフスキー／バレエ音楽「くるみ割り人形」 Op.71（全曲）
・アレンスキー／チャイコフスキーの主題による変奏曲 Op.35a
マルク・エルムレル（指揮）／コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団
クリストファー・バーネット（合唱指導）／ヘイルズワース・ミドル・スクール合唱団
録音：1989年5月、ロンドン 発売：2009年
SONY【ヨーロッパ輸入盤】
マルク・エルムレル(1932-2002)は、レニングラード生まれの指揮者で、父は著名な映画監督フリードリッヒ。レニングラード音楽院で名指揮者ボリス・ハイキンに師事し、1952年に名門レニングラード・フィルを振って指揮者としてデビューを果たしました。1956年から1990年までボリショイ劇場で常任指揮者として活躍し、バレエやオペラの指揮を多く手掛けるようになりました。1985年からは、イギリスのロイヤル・バレエの首席客演指揮者に就任、ソヴィエトの指揮者ならではのダイナミズムと、コヴェント・ガーデンの品のよさが見事に調和した演奏は、高く評価されました。その中でもチャイコフスキーの３大バレエの録音は、発売時からバレエ・ファンから絶賛を集め、いまなお名盤として高い人気を誇っています。
この「くるみ割り人形」もその１つで、バレエ界のベテラン指揮者エルムレルならではの躍動感のあるリズムはまさに職人芸。バレエ音楽としてシンフォニックに演奏したものが多いなか、エルムレルはダンサーの踊りや舞台の流れを彷彿とさせる瑞々しい演奏ぶりで、バレエとしての実用性を感じさせます。ダイナミックな部分は充分迫力がありますが、何といっても緻密で繊細な表現が素晴らしく、ファンタジックで美しい「くるみ割り人形」をお求めの方にはピッタリ。コヴェント・ガーデンの洗練されたアンサンブルも秀逸で、透明感さえ感じる弦楽器の音色やチャーミングな打楽器がとても効果を上げています。併録のアレンスキーの「チャイコフスキーの主題による変奏曲」も英国風らしく中庸の美徳を保った、上品で丁寧な演奏です。
