フランツ・リスト(1811-1886)：
1. ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
2. 灰色の雲 S.199
3. 凶星！ S.208
4. 悲しみのゴンドラ1 S.200-1
5. リヒャルト・ワーグナー-ヴェネツィア S.201
マウリツィオ・ポリーニ（ピアノ） 録音：1989年6月、ミュンヘン
DG【ドイツ輸入盤】
発表当時、実験的すぎると大論争を巻き起こしたリストの「ピアノ・ソナタ ロ短調」は、長大な単一楽章で書かれた独創的な内容で、シューマンに献呈された作品です。このリスト唯一のピアノ・ソナタは、近年になって評価が高まり、ピアニストたちもこぞって取り上げるようになりました。リストの最高傑作とも言われますが、技術的にもたいへん難しく、その複雑且つ緻密な構造を音にして表現するのは至難の業です。しかし、完璧なテクニックとスケールの大きい表現力を誇るポリーニにとっては、まさに打って付けの作品であり、よどみのない流れや立体感のある造形で見事な演奏をしています。力強さや緊迫感だけでなく、しなやかさや叙情感も併せもった名演です。また、ソナタと共に収められたリスト晩年の前衛的な作品群も、以前はほとんど演奏されることがなかったものの、ポリーニは若い頃から積極的に取り上げてきただけに、さすがにこなれた演奏です。「灰色の雲」や「悲しみのゴンドラ」など、小品ながらも繊細で美しいメロディーと神秘的な響きをもっており、リスト晩年の耽美的な世界を味わうことができます。
