別宮貞雄(1922-)：
１． 行進曲「清くあれ爽やかなれ」（1988）
◎組曲「映像の記憶」改訂版（1987/2005）
２．マタンゴ ３．黒い樹海 ４．遙かなる男 ５．鍵の鍵
福田滋（指揮）／リベラ・ウィンド・シンフォニー 録音：2006年4月(1)、2005年10月(2-5)
６～９．木管五重奏のための日本組曲第１番（1955）*
シリウス木管五重奏団 録音：2006年10月
10．プティ・パストラル ～フルートとピアノのための（1983）*
江尻和華子（フルート）、佐藤美佳（ピアノ） 録音：2006年10月
11～14. アルト・サクソフォンとピアノのための組曲「街の歌」（1981）*
斎藤茂（アルト・サックス）、佐藤美佳（ピアノ） 録音：2006年10月
スリーシェルズ【国内盤】
別宮貞雄は1922年5月生まれの85歳、現役最長老の作曲家の一人です。こどもの頃から歌うのが好きで、即興の鼻歌をよく口ずさんでいたそうで、東大で理論物理学を研究するかたわら、本来の勉学とは別に、池内友次郎について音楽理論を学びました。1946年には毎日音楽コンクールで２位、次の年も２位、その次の年には今も盛んに演奏される歌曲集《淡彩抄》で１位をとり、本格的に作曲家として歩むことを決心。一足飛びにパリ国立音楽院へ留学してしまう（矢代秋雄、黛敏郎と同期）。フランスではダリウス・ミヨーとオリヴィエ・メシアンに師事し、自己の音楽を研鑽しました。ミヨーを語るとき必ず別宮が引用するのが「音楽に古い新しいの別はない。よい音楽とわるい音楽があるだけだ。」というミヨーの言葉で、そのため別宮は手法の新旧に偏見を持つことなく、様々な音楽へ心を開いてきたと語っています。
主な作品としては、４つのオペラ《三人の女達の物語》《有馬皇子》《葵上》《井筒の女》、５つの交響曲、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの協奏曲、歌曲、合唱曲があげられますが、実は管楽器の作品にも知られざる傑作が埋もれています。このＣＤの収録曲は別宮本来の歌心に溢れています。《清くされ爽やかなれ》は爽快なメロディーが耳に心地よく、吹奏楽では人気のマーチですが、実は高度な作曲技術に支えられています。《映像の記憶》は映画、TV、ラジオのための100作にのぼる映像音楽から別宮自身が選んで演奏会用に仕上げたもの。たいへん洒落た旋律と響きはこれが日本人の曲かと驚くほどで、別宮の上質なポピュラー性の結晶です。《木管五重奏曲》は別宮がフランス留学中にミヨーにレッスンを受けながら書いた作品。母国を思い、日本民謡を素材にしてフランスで学んだ高度な技法がふんだんに使われています。《プティ・パストラル》はカトリック信者でもある別宮の敬虔な祈りの音楽。教会旋法によるフルートの透明なサウンドが美しい。《街の歌》は本ＣＤ中の白眉と言えるでしょう。別宮62歳の時の作品ですが、アルト・サックスとピアノの音色を最大限に引き出し、都会に生きる者の寂しさ、孤独、そして慰みを、粋に、洒脱に描いた、都会に暮らす者のオアシスのような極上の逸品。フランス仕込みの別宮ならではのお洒落な音楽です。
